ギターを始めたのは中学3年の冬でした。履歴書に書く「特技・趣味」の欄に書くことがなかった僕は急遽「運動部に所属してなかったのは入試で不利だから、代わりに何か文化的な趣味・特技を作ろう」という動機からでした。それから34年。まさかこんなに趣味・特技として長く続くとは考えもしませんでした。もし当時の僕が今の僕を見たら、少なくともギターを始めとする音楽制作やライブをしている僕自身にとても驚くだろうと思います。
ギターを始めて最初の1年は自宅の押し入れに眠っていたクラシックギターでした。弦高が高く弾きにくかったので、ナットを外して底面を削って弦高を低く調整したりしてました。今もし手元にあったらどんな演奏ができるか、そんな事を考えます。いとこに貸してそのままなくなってしまいました。
次に買ったのがオベーションのコピーモデルでした。生まれて初めてアルバイトをして、そのお金で買ったものです。このギターはネックの形状が極端なV字ネックで、それまでのクラシックギターと比べると、全く押さえるポイントが違うので戸惑いましたが、慣れればこっちの方が断然弾きやすかったです。高校3年の時の文化祭で弾き語りで出演した時に弾いた思い出深いギターです。ただネックの付け根が弱く、なんかの拍子でギターが倒れてしまって、その付け根にヒビが入ってしまい、そこを僕自身で鉄の板でボルト止めして弾いてました。やがてネックが順反りしてきて、トラスロッドを回したらネジが折れてしまい、どうにもならないギターになってしまいました。それでもピエゾPUの音とボリュームとトーンしかないコントロールが懐かしく思う時もあります。
タカミネのD28のコピーモデルも持ってました。いわゆる生のアコースティックギターで、安かったから買いました。これも良い音だった気がします。どこかへ旅に出るごとに持って歩いて、ある時は浜辺で、ある時は山の上で弾いて悦に入っていたものです。このギターの最期は悲惨で、当時働いていたカラオケ屋さんに「自由にお使いください」と置いていたところ、酔ったお客さんに叩き折られて、メチャメチャに壊されて単なる木のゴミになってしまいました。今でいうストリートピアノならぬストリートギターのはしりのようなつもりでしたが、不憫なギターでした。
当時は女性と付き合い、フラれるごとにその慰みとしてギターを買うという行為を繰り返していましたが、ヤマハのAPXを買ったのもそんな時でした。人前で弾くことは全くなくて、もっぱら家で弾くだけのギターでした。当時始めていた宅録のアコギパートで使っていましたが、音作りは難しかった記憶があります。でも原因はギター本体にあるというよりはリバーブやディレイなどの最小限のエフェクトがなかったから、という見方もできます。当時住んでいた横浜から帰郷する時に楽器屋に売ってしまいました。あれも今思えばトラブルもなく、良いギターでした。
帰郷した僕はまたアコギが欲しくなり、ヤマハのLL-6というアコギを買いました。完全に純粋なアコースティックギターでした。当時僕はターミナル駅の広場でストリートライブをしており、その時にはこの1本だけをずっと使ってました。当時、自分のホームページを作っており、ギターの表板にURLを書いていたこともありました。何が何でもエレアコ化したいと思っていたこのギターにマグネティックPUやコンタクトPUを付けてみたり色々していたのですが、どれもしっくりこなくて結局売ってしまいました。二束三文で手離しましたが、これも結構鳴りの良いギターでした。
帰郷した僕はある時「ギブソン ハミングバード 中古13万円」という広告を見つけまして、「これは買いだろう」と、住んでいた名古屋からその店がある東京・新宿まで夜通し車を走らせて、楽器屋の店頭で一番乗りで買いに行きました。当時の給料の手取りを考えると決して安くはなかったのですが、このギターは恐らく一生ものだろうだろうと決意して買いました。周りの人には好印象で良い音だと言ってもらえるのですが、なぜか弾いている僕にはよく音が聞こえなくて、力いっぱい弾いていました。当時はまだその辺のテクニックが不足していましたね。このギターもヤマハLL-6同様色々なPUを取り付けていました。元々KヤイリのコンタクトPUが付いていたのですが、音が気に入らなくてディーンマークレーやビルローレンス、EMGのマグネティックPU、モーリスのコンタクトPUを付けたりといろいろ試行錯誤してました。結局2022年にリペアショップでアンダーサドルへのピエゾPU搭載で決着しました。思い返せば、最初のコンタクトPUの使い方を間違えてました。出力されたコンタクトPUの音をギターアンプに繋いでいたのです。これではエレアコとしてのまともな音は出ず(中音域ばかりが強調される)、ハウリングが起きるのは当然だと、後年知りました。もちろんこのギターは今でも所有しており、文字通り一生ものとなりそうです。
最後に紹介するのはタカミネのエレアコです。200シリーズと位置付けられた中のカタログ上では最高級ギターでした。ギターを弾き始めて20周年記念として買ったものです。セミオーダーで、ボディーの色や形、バインディングの装飾、カッタウェイの有無、プリアンプの種類など、自分好みのカスタマイズが出来ました。完全に自分好みの形になったこのギターは、エレアコなのですが生鳴りは前述のハミングバードにも劣らないパワフルなもので、エレアコとしても著名なタカミネですから、弱点のない優れたギターです。これも一生ものですね。スタジオやライブでは必ず使ってました。
おまけですが最近、8歳の息子が僕のハミングバードやタカミネを勝手に触るので、壊されてはたまらんと、なにか代わりになるギターを買うことにしました。ハードオフで吟味して買ったのがスタッフォードという黒澤楽器の自社ブランドが発売していた中古のエレアコを買いました。22000円くらいでした案外性能がよく、(おそらく)B-BANDのピエゾPUが標準で取り付けてありました。やや小ぶりなギターで、ネックも短く、小柄な女性や子供にはピッタリ弾きやすいギターだと思います。で、買ったのは良いのですが、息子は相変わらずハミングバードやタカミネを触りに来るので、意味のない買い物となってしまいました。結局僕がリビングで弾く用のギターと化しています。
以上、僕が持っていた、あるいは持っているアコースティックギターについて思い出しながら書いてみました。昔買ったギターはどれも良い音だったなあ、と思います。当時はそれを見抜く力や知識がなかったのですね。さすがにもう新しくアコギを買うことはないと思いますが、それでもいつかはアコギの最高峰マーティンのD45が欲しいな、思ったりもします。欲は尽きないですね。

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