少々胸焼けがしまして、胃薬飲んで横になってました、
30代くらいまでは胃が痛いとか、胃がむかつくとか、そういった症状とは無縁の胃の強さだったのですが、40を超えたあたりからは、嘔吐したり寝込んだり、そういう症状が出るようになってきました。これはこれで貴重な体験といいますか、いつまでも五体満足ではないのだなと思います。
そして気持ちがわかってきます。
新宿駅のベンチでウトウト
吉祥寺辺りでゲロ吐いて
すっかり酔いも醒めちまった
涙ぐんでも、始まらねぇ
RCサクセションの名曲「いいことばかりはありゃしねぇ」の一節です。昔は「ああ、電車に酔ったんだな」くらいにしか感じなかったんですが、実際にそういう出来事が起こると「こういう事が言いたかったのだな」と気持ちがわかるようになってきました。
僕は曲を作るのが趣味であり、特技でもあるのですが、そんなに技巧があるわけでもなく、思った通りん自己満足が出来ればそれで良いと考えています。ただ大事にしているのは
自分の言葉で、誰にでもわかりやすく
することです。ここで技巧に走ることも出来るのですが、リアリティーに欠ける内容は好きじゃありません。でも心に優しい言葉ばかりを並べるのもちょっと違うと思います。人間常にポジティブでいられるものではないです。
今のJ-POPが最新だったとして、その前にはロックがあって、その前にはブルースがあったわけですが、そもそもブルースとは黒人奴隷たちが過酷な状況下で苦しみを歌ったものだといいます。だから「Blues」、ブルーなわけです。気持ちが辛い事を歌に置き換えて口ずさむ。そこに至る気持ちとはどんな辛いものだったのだったのでしょうか。
軽く優しいことばばかりが、歌じゃない
そう思うのです。もちろん優しい歌にも、恋歌などにもいい曲はたくさんあります。それを認めないほど僕も心がねじれているわけではありません。ただ、僕の歌作りを根本から変えてしまったアーティストがいるのです。
三上寛、です。
この人は特に1970年代初頭に活躍されたフォーク歌手で、今でも現役です。この人の歌はヤバすぎです。
遠くで叫んでいるやつぁ ありゃ誰だ
夜中に逃げた親父じゃないし
とうとう狂ったあいつじゃないし
いつか堕した子供じゃないし
道徳教えた先生じゃないし
まさか微笑み浮かべた 希望の友じゃないだろう
希望の前に諦め覚え
生まれる前に死ぬこと覚え
与える前に盗みを覚え
手を組む度に裏切り覚え
(あなたもスターになれる、から一部抜粋)
終始こんな歌詞の歌を怒ったような絶叫で歌い続けるのです。この世界が僕は大好きです。本領を発揮するのは性に関する歌です。
夜中の2時に目を覚ましたら
隣の部屋で部屋で泣いていた
お母ちゃんの声だ
白い身体が良く見えた
枕元にくしゃくしゃの
千円札が一枚
隣村の村長さんが
お母ちゃんを抱いていた
泣いてる母ちゃん 悔しいからか
泣いてる母ちゃん 辛いからか
母ちゃん泣かないで
母ちゃん泣かないで
気が狂いそうだよ!
(夜中の2時、より抜粋)
売春の歌です。少なくとも現在の売れてる曲の中には存在しない世界でしょう。でもそれが良いわけではありません。過激にしようと思えば、いくらでもできるのです。僕もそれをわきまえて曲を、というか歌詞を書いてきました。
「千羽鶴」
壊れてしまった私の心を 癒すものは何だろうか
それは薬ではなくて それは主治医の話でもない
祈りを込められた千羽鶴を 贈られたあの日も私はまだ
嬉しい気持ちなんかより 湿って暗いままの心 引き摺ってた
だけど 涙の淵でうずくまる私を
枕元の千羽の鶴は ただ 見守っていてくれる
明日への希望へ 羽ばたく千羽鶴 その二千枚の翼で 私をいざなって
いつの日か そう いつの日か 悲しみの今から飛び立つ日が
きっと来るよ きっと来るよ 涙こらえて 今夜も眠るよ
「病棟にて」
遠い街の灯りを四角い窓から 見下ろす 暮らしから離れた僕がいる
君を部屋に残し 全て 病のせいにして
を部屋に残し 全て 病のせいにして
僕は僕に 心から絶望した
眠れぬ夜を薬で飲み干し ふさぎ込みベッドに うずくまるだけ
うわ言と 叫びが夜の病棟で どこか自然な風景に 溶けてゆく
人生の行列を踏み外す罪 裁くことも許すこともなく過ぎて
そうそこは 病棟の行き止まり
そうそこは 病棟の行き止まりさ
「全ての苦しみから逃れるために」
彼の周りは残酷すぎる 彼はもう耐えられない
全ての苦しみから逃れるために 全ての悲しみから逃れるために
勉強部屋の天井から ロープをぶら下げて
輪に首を突っ込んで 首吊った 吊った
痛いとか苦しいとか 考える暇もなく
容赦なく彼の喉を ロープは絞めつけて
ひとしきり空中で 両手足をバタつかせて
何もかもを垂れ流して 数分後には動かない
彼は永遠に 忘れ去られた
入院している時に書かれた詞です。シチュエーションがシチュエーションだけに、相当に病んでますが、心がけているのは
心に傷跡を残す詞である
ということです。先ほどの三上寛氏の詞もそうですが、やはりインパクトが強いですね。決して万人に受け入れられる内容ではありませんし、人前で披露する内容ではないかもしれません。
それでも「聞いた人の心に傷跡を残す」その一点においては力を入れてきたつもりです。
詞は優しすぎても過激すぎてもダメですし、逆に優しすぎるのも過激すぎるのも良いと思います。
なぜか?
詞は自由だからです。ロックも、ブルースも、ジャズも自由なのです。ただどうせなら聞いている人の心に爪痕を残すような、そんな歌を心がけていきたいですね。

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