幼少期、少年期、青年期、成人期、中年期、高齢期と人間は成長し、日々過ごしていくのですが、その中で五体満足でいられる方がどれほどいられるでしょうか。
何か調子が悪くなったな、と思って病院にいったら自分では思いもよらない病名がついていることもあります。また特にメンタルヘルスに多いのですがネットで自分の精神疾患を調べて、ああでもないこうでもないと彷徨っている人もいます。
どちらを選んでもいいのですが、気分が落ち着かなくなったり、イライラしたり、悲しい気分になったり、絶望したり、色々な感情が湧いてくると思います。精神疾患は脳の病気だと言われて久しいのですが、そのメカニズムはまだ、わかっていないことも多いのです。たまたま薬が効くからこれを処方しましょう、効き目がなかったから替わりにこれにしましょう、副作用が強いから減らしましょう…こんなやりとりが多いと思いです。


これらは薬物療法を進めるうえで仕方のない行為なのですが、これとは別に心理療法があります。これはカウンセラーとの面談でその時その時の気分を話すことで心の状態を伝え、それにあったアドバイスをもらったり、時には宿題を渡されて、どんな心理状態の時に何を感じたかをレポートするというものもあります。
そんな中で、もっと簡単でもっと気軽にいつでもどこでも誰の手も借りずに限りなく安い値段で実現できる治療法があります。
それが音楽療法です。
療法とは名乗ってますが、要はふたつのことを行うだけです。
ひとつは受動的療法。音楽を聞いてその時の気分を緩和させる。
もうひとつは能動的療法。自分が音楽を奏でたり歌ったりすることです。
気分が鬱で音楽どころではない場合もあるでしょう。そんな時は、どうしますか?

気分転換に音楽を効くということはよくありますよね。これが音楽療法の基本です。
その時の気分にあった音楽を聴く、あるいは演奏することで気分が良くなる、それが大事なのです。
統合失調症の陽性状態のときに落ち着く音楽を聴かせたところ、気分が落ち着いたという、報告があります。
また認知症の患者さんに懐かしい思い出の歌を聴かせたところ深夜の徘徊がなくなり、記憶が戻ってきたり、お金の計算ができるようになったなどの報告があります。

ではどんな音楽が適しているのでしょうか?
これには残念ながらはっきりした研究結果が出ていません。人によって好みが違うし、気分の感じ方も異なるからです。
しかし確実に言えるのは自分の好きな音楽を楽しいときでも苦しいときでも聴くことで、心に良い変化が生まれるということです。知らず知らずのうちにそれらは私達に備わっている技巧と言っても良いでしょう。
受動的療法だけでなく、能動的療法にも効果を発揮します。
知的障害のある小さな子供に簡単な楽器を鳴らさせてみたら気分が落ち着いて規則正しく演奏ができるようになったそうです。
認知症の患者さんに簡単に演奏のできる楽器を持ってもらって、それらを演奏しながら歌を歌うということで、ストレスの解消にもなります。カラオケも効果があり、懐かしい歌を歌うと脳が活性化し、肺活量も多くなります。好きな歌の歌詞には自分の人生と重ね合わせることのある箇所もあります。そうして健康な状態を維持できる有効な方法がカラオケです。精神科病棟や高齢化施設には必ずカラオケが設置されています。
日本ではまだまだ音楽療法士は少なく、国家資格でもありませんが、医療にとって、または家庭などにおいても音楽は身近であり非常に効果のある治療法であると言えます。
最後にホスピスに置いての、音楽療法について触れておきます。ホスピスの患者さんは既に、死を宣告された患者さんです。痛みや苦しみを取り除く以外の治療はしません。そんな時に音楽はどんな形で役立つのでしょうか?
まず音楽療法が押し付けになってはいけません。患者さんが話しかけてきたら、話をしてあげて、帰りに「気が滅入ったら聴いてください」「気が向いたら聴いてください」とCDやカセットテープを置いてくるというスタンスで良いのです。
始めは、患者さんのリクエストの曲を比較的長い時間再生し、症状が進んできたらリクエストの曲以外にも唱歌や讃美歌などを静かに再生し時間も少しずつ短くしていきます。
こうして患者さんの旅立ちに寄り添うことが出来るのです。
僕も民間の音楽療法の資格を持ってます。それを使ってなにかすることは今のところありませんが、いつか人のために、または自分のために役立てたいと思っています。
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