リワークとは
リワークという言葉を聞いたことがありますか?
仕事を主に精神疾患で休職した人が社会復帰をするために最小限の力を養うためのトレーニングです。僕は数年前に、そこに9ヶ月通ってました。そこでは
- プレゼンテーションの練習
- ドクター講座
- 認知行動療法
- グループワーク
- マナー講座
- 相手の良いところを褒める
- 作業療法
- フリートーク
- リラクゼーション
などが行われていました。最短で3カ月ほどで退所できると聞いていたので、遮二無二頑張って、早く社会復帰したいと考えていました。
さっさと卒業、出来なかった理由
上記のプログラムに積極的に取り組んでいたにも関わらず、一向に先のプログラム(卒業プログラム、難易度が高い)に進ませてもらえない事に疑問と憤慨を持つようになりました。
そこで僕は「なぜ自分は先のプログラムに進ませてくれないのか?」と担当のスタッフさんに問うたことがあります。そうするとこう答えが返ってきました、
「MAXさん、なぜ先に進めないか、考えたことありますか?」
逆にやり込められて、まいりました。なぜ先に進めないのか、ヒントもくれません。とりあえず何かが欠けているのだろうと考えてみました。そこで他の通所者に聞いて回ることにしました。いきなり、
「僕に足りないものって何ですか?」
聞かれた方は驚いて、「え、いや、その・・・」と返事に困っていました。見かねたスタッフさんは
「MAXさん、いきなりそんな事聞かれても、相手が驚くだけですよ」
アプローチの変更
そういわれてもわからないものは、わからない、わけです。もう少し僕自身に関する他人からの目を聞いてみました。いきなり聞くのではなく
「ちょっと今、時間いただいても良いですか?僕にはなかなか卒業プログラムに進ませていただけないのですが、どういった点で進めないのか、良かったら教えてもらえないでしょうか?」と自分としては丁寧に質問をしました。
するとこういう答えが返ってきました。
「MAXさん、MAXさんは一人で何でもやろうとして、孤立しているのではないのですか?」
悪い癖
うーん、なるほど。楽勝で卒業・退所できると思っていたリワークでも、「自分が何でもひとりでやってしまう」癖が出てしまうのか、と思い知らされました。一人でやろうとしても、そこには限界があるのです。他の人との連携や協力がないと、いけないのだなと感じました。
そこで僕はまず手始めに「電子タバコ」を買い、休憩スペースでそれを吹かすようにしました。電子タバコ自体は大好きなので、それを吸っては吐いて煙(厳密には水蒸気)をモクモク出していると、他の喫煙者の通所者から質問が来るのです、
電子タバコ作戦
「MAXさん、それって何ですか?」
「ああ、これですか?これは電子タバコで、ニコチンもタールもない健康なタバコの見せかけです。」
「へぇー、そういうものがあるんですね」
「○○さんは、一日何本吸われるんですか?」
「そうですね、一箱は吸ってしまいます」
「うわぁ、今タバコは400円以上しますよね、きついですね」
・・・
と、電子タバコをネタに、話を膨らませる作戦を慣行しました。これは結構効果があって、コミュニケーションには最適でした。
そうすると他の通所者さんにも「ちょっと今、お話良いですか?」から話しかけるようにいろんな話題を話すようにしていきました。
目論見のある会話
- 何カ月くらい通っているのか
- かけているメガネはどこで買ったのか
- 好きなプログラム、嫌なプログラムは?
- 外食はどんなものを食べるか
- 脳トレは何かしているのか
などこれらの質問・会話は多岐にわたりました。それを見たスタッフさんはニコニコし始めたんです。そして
「MAXさん、調子が良いですね?今はどんなことに気を付けていますか?」
「はい、今までは一人で席に座っていたのですが、いろんな話をいろんな人たちとするようにしました」
「それは良いことですね。他の通所者さんからも『MAXさん、変わったね。なんか気さくに話せるようになりました』というふうに言ってもらってるんですよ」
と、自分のやり方は間違ってなかった、と思えました。そして卒業プログラムに入れてもらえることになったんです。
リワーク卒業プログラム
卒業プログラムはそれまでより難しいものでした。個人作業は何行にもわたる電卓計算、パズル的な要素の色分け作業、ボタン止めの作業、漢字の書き取り、など。で、それらの作業の時間を測って、前回と比べてどう変化したか、どんなことについて工夫をしたか(途中で休憩する・お茶を飲む・ゆっくりやる、など)を記録して、皆の前で発表するのです。それを参考に次回自分の作業のやり方に取り入れる、といった感じでした。
もうひとつの卒業プログラムはグループワークでした。
なにか一つテーマが決めてあり、それらを誰がどんな役割で演じることで、疑似的な会社での会議を再現するというものでした。時間制限があって、その間に平社員役が上司役にあれこれと要求したり、逆に上司役が平社員役に何分後までに意見をまとめてきてください、などと指示や意見を通じて与えられたテーマの結果を発表するという内容が多かったです。
最後にそれらをやってみての感想と、自分なりのストレス度を発表するという形でその日のプログラムを終えることとなります。
思ったよりストレスが溜まるので、疲れるというか、あれほどやっていけると思っていた卒業プログラムに嫌気がさしたりして、悶々とした日を送っていました。
卒業
そうしているうちに担当スタッフさんから
「そろそろMAXさん、卒業のレポートを書いていきましょう」という話が出ました。
そうです、もうすぐ自分はここを出ていくんだ、そう思うと入所した時の不安な気分を懐かしく感じるのでした。
卒業レポートは大作の11ページに及ぶものになりました。多ければいいと思っていた僕でしたがスタッフさんからは
「これでは多すぎるので、2ページにまとめてきてください」という殺生な言葉が返ってきました。11ページを2ページに減らすって、どうやって?
内容に自分の生い立ちやどうして休職になったかを長々と書いていた部分をバッサリカットして、通所して何が変わったか、それを社会復帰後どう生かすか、だけを2ページにまとめたところ、OKが出ました。
卒業後について
これでめでたくリワークを卒業出来ました。しかしリワークはあくまで訓練所。これはそのまま元の環境に通用するかどうかはわからない、というか通用しないと思います。それでも同じところに同じ時間に通所して、役に立ちそうな内容を教えてもらうことは、決して無駄ではなかったと思います。その後も僕は休職、入院などを繰り返すのですが、そのたびに
「ああ、こういう時にリワークで習ったことがあったけど、まだ自分の物には出来ていなかったんだなぁ」などと思い返す事が多かったです。9ヶ月にもあたるリワークプログラム、少しはお分かりいただけましたでしょうか?
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